2014年5月に日本創生会議・人口減少問題検討分科会(増田寛也座長)が発表した「ストップ少子化・地方元気戦略」を発表し、消滅可能性都市として大きな話題を呼んだ。その後、国は地方創生の呼び声のもとに、多くの自治体で人口減少対策についての施策の検討を行うこととなった。(特に、2014年11月施行の「まち・ひと・しごと創生法」により、各自治体は地域の人口の将来予測等を示す「地方版人口ビジョン」と2019年度までの5ヶ年の具体的な施策内容を示した「地方版総合戦略」の策定が求められることになった。)
岩手県大槌町においては、国の動きより前に、大槌町人口減少対策アクションプラン(cf. 039-1_大槌町人口減少問題対策アクションプラン)を策定しており、アクションプランを更に実効性のあるものにするための内容を議論することとなった。
大槌町においては、以下のような被災地特有の難しさがあった。
- 復興事業と通常業務との調整の難しさ
- 復興事業の進捗との調整により、実施する事業内容について柔軟性が求められること。
- 住民の置かれている状況は様々であり、一般的な施策を導入する場合においても考慮すべき事項が多いこと。
- 復興事業終了後のまちの姿の想定の難しさ
- 復興事業終了後のまちの姿(人口想定など)についてはかなり揺れ動くものがある。
- 役場組織の再編(応援職員(派遣職員、任期付職員など)が不在による対応)による変化が予想される。
- 周辺自治体や民間、NPOなどといった団体との関係性の変化が大きいことが予想される。
全国一律で行われたこの地方創生総合戦略及び人口ビジョンの策定であるが、大槌町の特殊な状況を鑑みて、以下のような方針で検討を行った。
- 震災により人口減少が一段と進んでいる状況を踏まえ、地域ごとの詳細な人口動態を把握する。
- 地元住民のみならず、震災を機に支援や関わりが増えた人との関係性を構築し、まちの活性化を図る。
- 復興事業終了後のふつうの「まちづくり」に向けての施策への展開可能性を十分に担保すること。
有識者、地元関係者などで組織した検討委員会での議論を経て、4つの基本目標のもと、6つの施策プロジェクトを提示し、具体的に取り組むこととなった。一見すると当たり前のような施策が展開されるが、復興事業と並行して行うべきことを数値目標とともに提示できたことは意義ある成果になった。
また、同時に策定した大槌町人口ビジョンでは、町全体ではなく、町の地域ごとの人口動態分析を行い、地域別の対策やまちづくりに生かせる内容とした。また、本文では掲載しなかった膨大な町に関するデータを収集、整理したことにより、今後の客観的な施策立案のベースとなるものを作成した。
目をひくような特殊な施策のパレードではない。地味だけれども確実に町のためになるための施策群が計画として記されている。これから確実に実施していくための道しるべとしての計画であってほしい。
type :まちづくり・施策立案
date :2015.04 – 2016.02(検討)/ 2016.03(公表)
links :http://www.town.otsuchi.iwate.jp/gyosei/docs/2016033100028/
notes :大槌町役場職員として担当(-2015.07)/ ㈱邑計画事務所と協働で策定を担当(2015.08-2016.02)
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